

エッセー「基本に忠実に」
福井新聞「リレーエッセー つらつら紡ぐ」に寄稿しました。 <2017.2.22 掲載> 「基本に忠実に」美術作家・湊 七雄 いささか唐突だが、この4月から1年間ベルギーに住み、ゲント美術アカデミーの客員研究員として版画分野の研究に専念する機会を得た。家族5人揃っての大移動となる。 私にとってベルギーは、過去に8年暮らした思い出深い場所であり、古巣に戻るようでもある。滞在先のゲント市は、フランダース地方にある人口25万人程の大学都市で、中世の趣が色濃く残る美しい街だ。 周りに今回の長期海外出張の話をすると、決まって「ベルギーは何語なの?」と尋ねられるが、この国の言語事情はいささか複雑だ。公用語はオランダ語・フランス語・ドイツ語の3つで「ベルギー語」というのはない。ゲント市はオランダ語圏なので、学生時代はこの言語の習得にずいぶんな時間とエネルギーを割いた。しかし、長らく使う事の無かった私のオランダ語はかなり怪しくなっている。 そこで、折角の機会を活かしオランダ語を基本から学び直したいという学習意欲が湧いてくる。どうやら私はこの「基本」という言葉に強く