

Traveling around Hong Kong
An essay published in the Fukui Shimbun-Newspaper, on 30 January 2019 Traveling around Hong Kong Shichio MINATO Taking advantage of the New Years holidays, we embarked on a 3-day, 2-night trip to Hong Kong together with another married couple (with whom we were good friends). Actually, "steamrolled" might have been a better term. I don't want to say this out loud, but we took off after handing over our three kids to my father, who lives alone and is 80 years old.
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エッセー「香港まち歩き」
福井新聞「リレーエッセー つらつら紡ぐ」に寄稿しました。<2019.01.30 掲載> 「香港まち歩き」
美術作家・湊 七雄 お正月休みを利用して、気の合う友人夫婦と共に2泊3日の香港旅行に出かけた。むしろ「強行した」という表現が適切かもしれない。大きな声では言えないが、3人の子どもを80歳になる一人暮らしの父に預けて出掛けたのだ。
計画当初は乗り気だった妻だが、いざ具体的な話になると遠慮がちになり「子どもたちとお留守番してようかなぁ」と、トーンダウンした。しかし田舎の父は心配無用とばかりに「お好み焼きに餃子、そうそうピザも焼こう!」という具合に快く引き受けてくれ、子どもたちもこの特別な機会を喜んだ。
子育て世代にとって、子ども抜きの旅行は何ともぜいたくだ。ピアニストの妻も私も仕事で海外に行く機会はあるものの、純粋な観光目的の海外旅行はほぼなく、日本以外のアジアの国を旅したこともなかった。 香港はとにかく衝撃的だった。街の活気や人々の生きざまから、多くのインスピレーションを受けた。「何かいいことがありそう」という直感を頼りに、無理して


Blank Space
An essay published in the Fukui Shimbun-Newspaper, on 27 June 2018
Shichio MINATO The process of sketching turns our universe of color into a world of monochromatic tones. As a mode of expression, it is rather simple and plain. But the more I continue sketching, the more I understand how deep and profound an art this is. Currently, I teach sketching at 2 universities. At both schools, I try to sketch together with my students as much as possible. The reason for that is, whil


エッセー「余白」
福井新聞「リレーエッセー つらつら紡ぐ」に寄稿しました。 <2018.6.27 掲載>
「余白」 美術作家・湊 七雄 色のある世界をモノトーンに置き換えながら描き進めるデッサン。表現としては素朴だが、デッサンを続ければ続けるほどその奥深さを知ることとなる。
現在私は二つの大学でデッサンの授業を担当しているが、いずれの大学でも極力学生と一緒に描くようにしている。それは、ただ単に描くことが好きだというのもあるが、留学時代にデッサンの指導を受けたファンデンベルグ先生の影響が強い。
先生は折に触れ、私たち学生と一緒に描いてくれたが、(失礼ながら)超人的にデッサンが上手いという訳ではなかった。人物モデルを前に、立派なヒゲをなでながらブツブツ独り言をもらし、思うように描けず困り果てている様子を何度も目撃した。しかし、先生の描くデッサンには品格が備わっており、そしてそこには美しい「余白」があった。
鉛筆やペンなど数あるデッサン用具の中で、私が特に好んで使うのは「木炭」だ。柳などが原料となった画用木炭は原始的でシンプルな描画材だが、布を使い炭の粒子


The time is now
An essay published in the Fukui Shimbun-Newspaper, on 28 February 2018 Shichio MINATO I usually simply pass through this route during my commutes by car or bicycle, but today I decided to take the long way and spent over an hour on foot. On this freezing cold morning, the melody to "A Hazy Shade of Winter" - from Simon & Garfunkel - played inside my head. The immense energy harbored by the morning sun created a stark shade of chiaroscuro contrast as it began to apply hues of


エッセー「今しかない」
福井新聞「リレーエッセー つらつら紡ぐ」に寄稿しました。 <2018.02.28 掲載>「今しかない」 美術作家・湊 七雄 普段は車か自転車で通り過ぎるだけの通勤路を遠回りしながら1時間以上かけて歩いてみる。凍てつく寒い朝、サイモン&ガーファンクルの「冬の散歩道」のメロディーが頭に流れる。大きなエネルギーを宿した朝日が明暗のコントラストをつくりながらモノクロの街に彩りを与えていく。 --- 自分は確かに今を生きている。 美しい情景に出会うとき、その感動を具現化し誰かと共有したいという気持ちが湧き上がる。それは偶然見つけた美味しい料理店を、「内緒だよ」なんて言いながら誰かに教えたくなる感覚に似ている。 昨年の春にベルギーに戻り住んだのがつい先日のようだが、帰国予定日が近づき、滞在も残り数週間となった。ここでの生活もあと僅かだと思うと、ごく普通の日常が特別に感じられようになる。「いつでもできる」が「今しかない」となり、時間の捉え方やモノの見え方までもが変わってしまうから面白い。 ここでの一年を振り返るとき「光」が重要なキーワードとなる。窓の照明、水面


What is “Normal”?
An essay published in the Fukui Shimbun-Newspaper, on 16 August 2017 Shichio MINATO There are several things in everyday life that end up being "normal". Of course, it goes without saying that the standards for "normal" will vary for each individual. For example, if you turn a faucet, water will come flowing out. You have electricity. But unless you find yourself in a situation without those things, we tend to forget to be grateful for how blessed our environment may be. In e


エッセー「当たり前」
福井新聞「リレーエッセー つらつら紡ぐ」に寄稿しました。 <2017.8.16 掲載> 「当たり前」 美術作家・湊 七雄 日々の生活で「当たり前」になっていることはいくつかある。当然の事ながら、「当たり前」の基準は人それぞれ異なるが、蛇口をひねれば水が出る、電気が使えるなど、それらがない状況に置かれなければ、恵まれた環境へのありがたみを忘れがちだ。 4月初旬、家族同伴でベルギー・フランダース地方のゲント(ヘント)市郊外に引っ越した。1年間の海外出張だ。私には慣れた土地で、生活の心配は特段なかった。しかし近年の移民問題や無差別テロなどの影響で、「外国人」として改めてこの地に暮らすには、ことのほか難しい問題が増えており、思うように事が進まない。自分の「当たり前」の基準が揺さぶられている感覚だ。 滞在許可書、子どもの学校、免許証、車、電話、銀行、税金…。ドタバタ劇のごとくハプニングが続き、おかげでエッセイの題材には事欠かなかった。 冗談はさておき、今回の引っ越しで特に難航したのは家探しだった。詳細は省くが、フランダース地方では、法改正により3年以下の賃


エッセー「基本に忠実に」
福井新聞「リレーエッセー つらつら紡ぐ」に寄稿しました。 <2017.2.22 掲載> 「基本に忠実に」美術作家・湊 七雄 いささか唐突だが、この4月から1年間ベルギーに住み、ゲント美術アカデミーの客員研究員として版画分野の研究に専念する機会を得た。家族5人揃っての大移動となる。 私にとってベルギーは、過去に8年暮らした思い出深い場所であり、古巣に戻るようでもある。滞在先のゲント市は、フランダース地方にある人口25万人程の大学都市で、中世の趣が色濃く残る美しい街だ。 周りに今回の長期海外出張の話をすると、決まって「ベルギーは何語なの?」と尋ねられるが、この国の言語事情はいささか複雑だ。公用語はオランダ語・フランス語・ドイツ語の3つで「ベルギー語」というのはない。ゲント市はオランダ語圏なので、学生時代はこの言語の習得にずいぶんな時間とエネルギーを割いた。しかし、長らく使う事の無かった私のオランダ語はかなり怪しくなっている。 そこで、折角の機会を活かしオランダ語を基本から学び直したいという学習意欲が湧いてくる。どうやら私はこの「基本」という言葉に強く


Creating an environment for art
An essay published in the Fukui Shimbun-Newspaper,, on 24 August 2016 Shichio MINATO The lamp genie in Aladdin from One Thousand and One Nights is said to make your 3 wishes come true. What would you like to wish for? As for me, the first thing I ask would be ‘to create an atelier around the world that is open to everyone to use.’ When I visited London for the first time 20 years ago, I suddenly thought of popping into the atelier of Bill Woodrow, a contemporary artist/sculpt